菩薩の頭の中
私の旦那様は菩薩である。
とにかく怒らない。イライラしない。心が広い。不満を言わない。
これほどまでに穏やかな人間がいるのだろうかと思うほど、穏やかである。
仕事場でも「この人を怒らせたら終わり」と言われているらしい。
その極意を聞いてみると、必ず
「人に期待しないから」
と返ってくる。
彼は人に期待しない。
例えば私で言うと、結婚した当初から私が家事をすることを期待していない。
だから私がひとたび掃除機をかければ女神と称賛し、料理を作れば結婚してよかったとしみじみ噛みしめ、洗濯物を干せば自分は幸せ者だとうっとりする。
この期待値の低さが素晴らしい。
私は掃除が嫌いで、特に掃除機を操るのが苦手だ。だからあまり掃除をしたくない。
逆に洗濯はそれなりに好きで、晴れた日は何かを干したくなる。
だから基本、掃除はしない。洗濯は毎日でもする。
このアンバランスなかんじでも、全く文句を言わない。むしろ「毎日洗濯をしてくれるなんて、君はなんて素晴らしいできた人間なんだ!」と称賛される。私は愛するより愛されたいし、叱られるより褒められたい。この期待値が続く限り、私はほぼ毎日褒めてもらえることが約束されているので満足である。
この調子で期待しないで頂けると助かるなぁと日々思っている。
期待なんぞ、自分で自分にいくらでもしているのだから、他人にされても疲れるだけである。
そういえば、と思って考えたことがある。私は彼に期待しているのか?
期待していることは多々ある気がする。これをしてほしい、ああなってほしい。
でも、それを不満という形で表に出すのは違うかな、と思っている。
私がちゃんと言わないからやっていないだけ、私が教えないからそうしているだけ。だから私の行動を変えたり、環境を変えたりしないと、と考えている気がする。
2人の間に、今のところケンカは勃発していない。
いつまで続くのか楽しみであり、怖くもある。